痴人の愛 谷崎潤一郎

美しい女。白くくっきりとした目鼻立ちの顔に落ちかかる黒い髪。厚みのある背中にくびれた胴。衣服越しにたっぷりと丸みを帯びた臀部。妖艶と若き生命力と西洋的なるもの。それへの憧れ。すべてを味わいつくしてもなお飽くことのない欲望を抱くところのこの女、この女にどこまでも辱められ虚仮にされ苦痛を味わわされたとして、世にまたとないこの女がそれでも自分を見ているのならこれははたして不幸であろうか。絶対的な存在は私たちの未来に訪れるだろうか。それが私たちとともにあることなど期待できるだろうか。河合譲治は不幸ではない。

 

別にMじゃないが。